資産運用を考えている人の中には「中国」への投資を検討している人は多いのではないでしょうか。
中国への投資を考えるのであれば、会社員の方であればまず投資信託でしょう。
中国については以下の記事で論じていますが、
投資信託を購入する場合、つまり企業の運用のプロに任せる場合は、
どのくらいのリターンが実際に見込まれるのでしょうか?
<中国株式投資マップ>国(経済)・株式市場のファンダメンタルズ分析・為替リスク・有望銘柄を紹介。
今回はその投資信託で中国株を組み入れている
「HSBCチャイナオープン」
の運用状況と、今後の見通しを解説していきたいと思います。
ちなみにその他の中国投資信託は以下で分析しています。
【中国株投資信託】10商品を比較検討・おすすめの投資先は結局どこなのか?
HSBCチャイナオープン- 概要と運用方針 –
HSBCチャイナオープンとはHSBC投信が運用(マザーファンドの運用のHSBCグローバル・アセット・マネジメント@香港)を委託され、
資産の管理をしているのが三井住友信託となっているファンドです。
投資対象としては海外・アジアの株式投資であり、投資形態は「ファミリーファンド」となっています。
ファミリーファンド(方式)とは、複数の投資信託の資金をまとめて「マザーファンド(親ファンド)」と呼ばれる投資信託に投資し、マザーファンドで株式や債券などに分散投資をして運用する方式のことをいいます。
一般の投資家は、「ベビーファンド(子ファンド)」と呼ばれる投資信託を購入し、ベビーファンドがマザーファンドに投資をする仕組みになっています。
内外の株式や債券などの幅広い資産に分散投資をするファンドを複数運用している投資信託会社の場合、1つずつのファンドごとに国内株式や外国債券などの銘柄選択をするよりも、国内株式のマザーファンドや外国債券のマザーファンドを作って、複数のベビーファンドがファンドごとの運用方針に基づく投資割合に応じて複数のマザーファンドに投資したほうが、運用効率も高くなると考えられます。
このような場合にファミリーファンド方式が採用される傾向にあります。
HSBCはファミリーである、「HSBC チャイナ マザーファンド」「HSBC 中国A株マザーファンド」
に投資をすることによって、実質的に中国株式などで運用をすることになります。
チャイナマザーファンドは幅広く中国内外の企業に投資をしており、以下のような資産内訳となっています。(2021年2月)
やはり手堅く、TENCENTとアリババ、銀行系の株を中心にポートフォリオの組み入れを行なっていますね。
2つ目の「中国A株マザーファンド」のベンチマークは「MSCI China A International index」と、「FTSE China A50 Index」の2つとなります。
以下はMSCI China A International indexのデータとなります。
100%中国、セクターは金融などサービス産業がメインとなっていますね。
中国はすでに新興国ではないので産業転換が完了しているので当たり前と言えば当たり前ですね。
FTSE中国A50インデックスは以下のような指数となります。
FTSE中国A50インデックス
「FTSE China Index Series」の一つで、FTSE Russellが算出・公表する、中国A株市場の主要50銘柄で構成される株価指数をいいます。
これは、中華人民共和国の上海証券取引所及び深セン証券取引所に上場する中国A株のうち、流動性及び浮動株比率の基準を満たす時価総額上位の主要50銘柄で構成されており、2003年7月21日の基準値を5,000として、
浮動株比率を考慮した時価総額加重平均により算出されます。(本指数は、配当から源泉徴収税を控除した金額を再投資する課税後配当込みの指数)
現在、東京証券取引所には、本指数の円換算値との連動を目指すETFの「南方A50:南方 FTSE 中国A株50 ETF」が上場され、取引されています。
(引用:FTSE中国A50インデックス)
ちなみに中国A株マザーファンドの組み入れの内訳は以下の通りとなっています。(2021年2月)
HSBCチャイナオープンの運用成績・パフォーマンス
それでは概要を把握したところで、現在のHSBCチャイナオープンの運用成績を見ていきましょう。
リーマンショック後に一早い経済の復活で株価がいち早く回復していきました。
しかし、2014年からの成長減速の影響を受けて株価は大きく下落しました。
その後、2017年からは新興国経済の復活で上昇していきましたが、2016年から2019年まではトランプ政権下で勃発した米中貿易戦争の煽りを受けて軟調に推移しました。
しかし、2020年に入ってコロナショックからの大相場で基準価格は飛翔してきています。
以下はHSBCチャイナオープンのパフォーマンスとなります。
年 | 1年 | 3年 (年率) |
5年 (年率) |
10年 (年率) |
---|---|---|---|---|
トータルリターン | 39.60% | 8.79% | 16.48% | 11.37% |
カテゴリー平均 | 43.03% | 10.86% | 16.04% | 10.83% |
標準偏差 | 24.43 | 22.64 | 19.45 | 23.86 |
カテゴリー | 23.50 | 22.03 | 19.00 | 22.94 |
シャープレシオ | 1.62 | 0.39 | 0.85 | 0.48 |
カテゴリー | 1.85 | 0.49 | 0.84 | 0.47 |
ファンド数 | 45本 | 38本 | 35本 | 33本 |
直近の1年や3年のトータルリターンはカテゴリー平均に劣った成績となっています。
基準価格は堅調に推移はしていますが、必ずしも優秀な中国株ファンドということはできなくなってきているのです。
他の中国株投資信託との比較
以下は同じ分類の投資信託ファンド比較です。
三井住友・ニュー・チャイナ・ファンド、UBS 中国株式ファンド、中華圏株式ファンド(毎月分配型)の3つと比較します。
基準価額、純資産は 2021年03月26日 現在
トータルリターン等評価情報は 2021年02月28日 現在
ファンド名 | HSBC チャイナオープン |
三井住友・ ニュー・チャイナ・ ファンド |
UBS 中国株式ファンド |
中華圏株式 ファンド (毎月分配型) |
---|---|---|---|---|
販売手数料 | 3.3% | 3.3% | 3.3% | 3.85% |
信託報酬等(税込) | 1.98% | 1.98% | 1.97% | 1.76% |
トータルリターン1年 | 39.60% | 51.68% | 34.28% | 32.38% |
トータルリターン3年(年率) | 8.79% | 11.06% | 13.90% | 9.35% |
トータルリターン5年(年率) | 16.48% | 16.54% | 24.00% | 13.49% |
トータルリターン10年(年率) | 11.37% | 11.83% | 16.30% | 8.54% |
シャープレシオ1年 | 1.62 | 2.35 | 1.83 | 1.34 |
シャープレシオ3年 | 0.39 | 0.52 | 0.69 | 0.41 |
シャープレシオ5年 | 0.85 | 0.93 | 1.36 | 0.71 |
シャープレシオ10年 | 0.48 | 0.55 | 0.76 | 0.39 |
標準偏差1年 | 24.43 | 21.97 | 18.73 | 24.09 |
標準偏差3年 | 22.64 | 21.11 | 20.07 | 22.61 |
標準偏差5年 | 19.45 | 17.73 | 17.63 | 19.03 |
標準偏差10年 | 23.86 | 21.59 | 21.45 | 21.65 |
3年のトータルリターンを見ると、UBS中国株式ファンドだけが一人勝ちしている状態です。
10年スパンで見るとHSBCチャイナオープンもなかなかのリターンとなっています。
標準偏差も1〜10年で、上記の4つの投資信託は同様の水準ですので、
中国株投資信託を購入する際は、気をつける必要はなさそうです。
標準偏差は投資の世界ではリスクとして認識されており、価格変動のブレ幅ということを意味します。
私であれば、そもそも今の時期に中国株に投資している投資信託は購入を控えます。
HSBCチャイナオープンの高い手数料
HSBCチャイナオープンの手数料は、
購入手数料3.24%(税抜き3.00%)を上限としています。
なぜ固定ではないかというと、HSBCチャイナオープンはマザーファンドへの投資を実行しており、
マザーファンドの方針により価格は変動するからです。
信託報酬は年間1.94292%(税抜き1.799%)となっています。
細かい数字ですね。
ちなみにこの信託報酬は非常に高いです。
以下は日本の国内投資信託、アクティブ型ですが、信託報酬は1.53%/年が平均とされていますね。
加えてインド株の投資信託、新光サザンアジア株式ファンドなどは信託報酬が1.652%〜1.776%となっていますので、
中国に投資をするというのは本当に費用がかかるということがよくわかります。
評判の新光サザンアジア株式ファンドの運用成績・見通しを分析したので結果の共有
HSBCチャイナオープンのまとめ
HSBCチャイナオープンは、
株価上昇が期待される中国株を厳選して投資運用するまさに中国株の「プロ」である位置付けで、
一般投資家を集めていますが、運用成績のボラティリティも大きく、
国際情勢的にもトータルリターンが直近はマイナスであり、あまり魅力的な投資先とは言えません。
もし魅力的な投資先を探しているのであれば、私が独自で作成している新興国投資関連について、ランキング記事などでおすすめ投資先を紹介していますので、
参考にしてみてくださいね。