スリランカ中央部のジャングルに突如そびえ立つ巨岩「シーギリヤロック」。
その頂上には1500年前の王宮跡が広がり、周囲には美しい水庭園や謎めいた壁画が残されています。
まるで空中に浮かぶ古城のような姿から「天空の宮殿」とも呼ばれ、しばしば“世界第8の不思議”とも称されるスリランカ屈指の観光名所です。
ユネスコ世界文化遺産にも登録されており、スリランカ旅行では外せないスポットでしょう。
実際、私もスリランカ旅行中のメインイベントに据えていました。
しかし、高さ約200メートルの断崖を1,200段の階段で登るシーギリヤロックは、「体力が不安…」「高所で怖いのでは?」と心配になる方もいるかもしれません。
またアクセス方法も少し複雑そうですよね。でもご安心ください。
本記事では、シーギリヤロックへの行き方(最もおすすめのタクシーチャーター)から、押さえておくべき見所、そして「怖いって本当?」という疑問や歴史にまつわる謎まで、詳しくカジュアルに解説します。
個人旅行で訪れる日本人観光客の視点に立ってまとめましたので、これを読めばシーギリヤロック観光の準備は完璧です。
それではさっそく天空の古代要塞の魅力に迫ってみましょう!
シーギリヤロックとは?その魅力と基本情報
シーギリヤロック(Sigiriya Rock)は、スリランカ中央マータレー地区に位置する巨大な一枚岩です。
高さは地表から約180~200メートル、標高約370メートルに達し、四方が切り立った楕円柱状の岩頸(がんけい)です。
5世紀後半のシンハラ王朝時代、この岩の頂に宮殿が築かれました。現在その遺構が残り、頂上からは360度の絶景が望めます。
岩肌中腹には古代の美女壁画(フレスコ画)が描かれ、麓には対称式の水庭園や岩窟寺院の跡が広がっています。
その高度な都市計画と独特の景観から、1982年に「シーギリヤの古代都市」として世界文化遺産に登録されました。
スリランカには8件の世界遺産がありますが、中でもシーギリヤロックは最も人気と言ってよい観光スポットです。
→スリランカの8個の世界遺産を徹底解説!必見の観光名所を一挙に紹介する。
その魅力は何と言っても、“ジャングルの中に突如現れる巨岩+古代王宮”という唯一無二の光景でしょう。
頂上まで1,200段もの階段を登らなければなりませんが、道中には神秘的な壁画や鏡のように磨かれた壁面、巨大なライオンの石像跡など見所が満載です。
かつての王による豪華絢爛な空中宮殿と、それを取り巻く謎の数々に思いを馳せながら登頂する体験は、他では味わえない感動を与えてくれます。
さらにシーギリヤロックは「ライオンロック(獅子岩)」とも呼ばれます。
その名の由来は、岩の中腹に設けられた宮殿入口が巨大なライオンの姿を模して造られていたことによります。
現在はライオンの足だけが残っていますが、かつては岩山に大きな獅子が口を開けて佇んでいたと想像するとワクワクしますね。
豆知識
2023年からシーギリヤロックの入場開始時間が大幅に早まり、朝5時30分から登れるようになりました。そのため、時期によっては頂上で美しい日の出を拝むことも可能です(暗いうちから登る場合は懐中電灯必携)。昼間は暑さが厳しいスリランカですが、早朝や夕方なら涼しく、空いている時間帯で観光できるのでおすすめです。
それでは次に、シーギリヤロックへの行き方を詳しく見ていきましょう。
シーギリヤロックへの行き方(アクセス)【タクシーチャーターがおすすめ!】
シーギリヤロックはスリランカの中心部に位置し、主要都市から距離があります。首都コロンボから約170km(車で4〜5時間)、仏教の聖地キャンディから約90km(車で2.5〜3時間)、最寄りの町ダンブッラからは約20km(車で30分)ほど離れています。公共交通でも行けますが、時間と手間がかかるため、効率重視ならタクシーチャーターが断然おすすめです。以下に主なアクセス手段を比較します。
移動手段 | 所要時間 | 費用目安 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
長距離バス | 約5~6時間 (乗換含む) |
約1,500ルピー (約600円) |
料金が安い | 路線・乗換が複雑、車内が混雑・快適性に欠ける |
鉄道+バス | 約5時間~ (列車2~3時間+連絡移動) |
約1,000ルピー (約400円) |
列車移動は比較的快適 | 直行ルートがなく途中駅(例:ハバラナ)から更にバスやタクシーが必要 |
タクシーチャーター (最も一般的) |
約4時間 (コロンボ発) |
1台1日:約1万~1.2万円 | ホテル送迎で楽々、安全・快適、観光地巡りも自由自在 | 公共交通より割高(人数が少ない場合) |
現地ツアー | 行程による (例:日帰りで往復8~10時間) |
ツアー内容による | 手配が簡単、ガイド付きで安心 | 自由度が低い、割高になる場合も |
公共交通で行く場合
個人でバスや鉄道を乗り継いで行くことも可能です。
例えば、コロンボから長距離バスまたは鉄道でキャンディまで行き、そこからシーギリヤ方面行きのバスに乗り換えるルートがあります。
他にもコロンボからダンブッラ行きのバスに乗り、ダンブッラでシーギリヤ行きローカルバスに接続する方法もあります。
運賃は安いですが、本数が少なかったり乗換が必要だったりと時間に読めない部分が多いです。
また車内は混雑しやすく、エアコン無しのローカルバスだと長時間の移動は体力的にも負担になるでしょう。
タクシーチャーターが最もおすすめ
上記の通り、海外からの旅行者の多くは貸切タクシー(車と運転手のチャーター)を利用してシーギリヤを含む文化三角地帯を巡っています。
タクシーチャーターなら空港や滞在先ホテルでピックアップしてもらい、そのまま目的地まで直行できます。
時間のロスがなく、車内で荷物を安全に預けられる安心感もあります。
経験上、1日あたり1台約1万円程度で利用でき、複数人でシェアすれば一人当たりの負担は意外と安く済みます。
筆者も8泊9日のスリランカ旅行で専属ドライバーをチャーターし、シーギリヤロックを含む主要観光地を快適に巡りました。
→モデルコースで巡るスリランカ旅行記:タクシーチャーターを利用して全8個の世界遺産を訪問する8泊9日の一人旅の過程をお伝えする!
ドライバーは有資格ガイドを兼ねている場合が多く、道中で歴史解説を聞けたのも良かった点です。
筆者が活用したスリランカタクシーサービスについては以下をご覧いただければと思います。
現地発ツアーを利用する
スリランカ到着後、現地旅行会社のオプショナルツアーに参加する手もあります。
コロンボやネゴンボ発の日帰りシーギリヤ+ダンブッラツアーなどが催行されています。
運転をお任せできる上、日本語ガイド付きのプランもあり初心者でも安心です。
ただし料金はタクシーチャーターより割高になりがちで、団体行動のため自由度は低くなります。
個人旅行で自分たちのペースで観光したいなら、やはりチャーター車で回る方法が便利でしょう。
ワンポイント
シーギリヤロック観光は朝早く出発するのがおすすめです。例えばキャンディに滞在している場合、午前7~8時頃にホテルを出てタクシーで向かえば、10時前後には到着できます。そのまま登頂すれば正午前に下山でき、猛暑の時間帯を避けられます。逆に午後遅めに着いて夕方登る手もありますが、日没時間に注意が必要です(閉園は18時ごろ)。暑さ対策と時間管理に気をつけて計画しましょう。
シーギリヤロックの見所(ハイライト)徹底紹介
シーギリヤロックは麓から頂上まで見所の宝庫です。登頂には通常40分~1時間強かかりますが、随所で足を止めて観光スポットを楽しみながら進むと良いでしょう。ここでは順路に沿って主な見所を順番に解説します。
見所①:象の門(Elephant Gate)
岩山の登攀口付近にある入口ゲート跡です。
シーギリヤロックには古来3つの門がありましたが、その一つがこの「象の門」と呼ばれるポイント。
象の横顔に見える形の大岩が門柱のように佇んでおり、ユニークなフォトスポットになっています。
足元には当時のプール(池)があり、これは王の妃たちが入浴したプールと伝わります。なんとカッサパ王(後述)の王妃は500人もいたとの説があり、その豪奢な暮らしぶりが偲ばれます。
見所②:自然の岩のアーチ
登り始めてしばらく行くと、巨大な岩が2つ組み合わさってできた天然のトンネルを通過します。
これは人工でなく自然に崩れ落ちた岩が偶然アーチ状に重なったものです。
まるで計算し尽くされたかのような絶妙なバランスで、シーギリヤの不思議を感じるスポットです。
同様の自然アーチは出口付近にもありますが、入口側にあるこの最初のアーチの方が形が綺麗です。
☆階段豆知識☆
シーギリヤロックの階段は途中まで白っぽい石で造られています。この白い石は直射日光で過熱しにくい素材で、熱帯の強い日差しでもできるだけ階段が熱くならない工夫なのだそうです。古代の設計者たちの細やかな配慮に驚かされますね。
見所③:鏡の壁(ミラーウォール)
岩面に沿って設けられた高さ数メートルの壁で、その表面が磨き上げられて鏡のように光っていることから「鏡の壁」と呼ばれます。
階段を約300段上がった地点に現れ、オレンジ色の岩肌とともに目に入ります。本来はこの壁面自体が磨き上げられ、人が映るほどツルツルだったとも言われますが、もっと興味深いのは壁に残る古代の落書き(詩文)です。
当時の人々が残したシンハラ語の詩が多数刻まれており、シーギリヤを賞賛する内容などが記録されています。
たとえば「私は来たり、見たり、少女達の天にも昇るような美しさに心奪われたり…」といった詩が残されており、これらは8~10世紀頃の訪問者が書いたものと考えられています。
まさに古代の旅行者による口コミですね! 現在では壁画保護のため鏡の壁への落書きは禁止されていますが、往時のままの文字が読み取れるのでぜひ目を凝らしてみてください。
見所④:シーギリヤ・レディ(美女のフレスコ画)
シーギリヤ最大のハイライトともいえるのが、中腹の岩肌に描かれた謎の美女たちの壁画です。
階段途中から伸びる鉄製らせん階段を上がった先の岩壁に、17~18人ほどの女性像が描かれています。
豊満な半裸の上半身に鮮やかな装飾品をまとった女性たちが、雲の中に浮かぶような姿で描かれており、「シーギリヤ・レディ」と呼ばれます。その表情や色彩は1500年以上前のものとは思えないほど美しく生々しく、見る者を魅了します。
このフレスコ画、実はかつて500人もの女性が描かれていたと伝わりますが、年月や人為的破壊により現在確認できるのはごく一部です。
一体誰が、何のためにこんな美女図を描いたのか、正確なことは未だ解明されていません。
有力な説としては「カッサパ王の后妃や侍女を描いたもの」「豊穣や雨乞いを司る天女(アプサラ)像」といった説がありますが、真相は謎に包まれています。
壁画は風化防止のため撮影禁止なので、目に焼き付けて記憶に留めましょう。なお、この岩窟部分を見学した後は同じ螺旋階段を降りて元の順路に戻ります。
見所⑤:兵士の居住区跡と「攻撃岩」
再び通常の階段に戻り進むと、平坦な広場に出ます。ここは宮殿を守る近衛兵たちの詰所や宿舎があったエリアです。
岩肌には部屋の基礎と思われる窪みなどが残っています。そして目を引くのが、広場の奥に鎮座する巨大な一枚岩。実はこれ、有事の際に敵めがけて落とすために意図的に残されていた“攻撃用の岩”と言われます。一見不安定に見えるこの巨岩ですが、絶妙なバランスで静止しています。
幸い戦乱で使われることは一度も無かったそうですが、城塞としての防御アイデアもうかがえる興味深いポイントです。
見所⑥:ライオンテラス(獅子の門)
岩山の中腹、頂上への最後の登り口に広がる大テラスがライオンテラスです。ここには巨大なライオンの石像の前脚と爪が残っており、シーギリヤロックを象徴する写真スポットになっています。
古代、この石像は前脚だけでなく獅子の頭部まで備わっていて、訪問者はライオンの口の中に設けられた階段を通って宮殿へ入ったとされています。
つまりカッサパ王は自らをライオンになぞらえ、敵対者に威圧感を与える要塞の門構えを作り上げたのです。このライオン像にちなみ「シーギリヤ(シンハ=ライオン、ギリヤ=喉)」という地名がついたとも言われています。
ライオンテラスは広くベンチもあるため、多くの観光客が一息つく場所でもあります。実はカッサパ王自身も、玉座に座るようになってからは頂上へは歩いて登らず、麓からライオンテラスまでは担架で運ばれ、そこから先だけ自分の足で歩いたと伝わります。ここから先はいよいよ王のみが踏みしめた“天空への階段”です。
見所⑦:頂上の王宮跡とパノラマ眺望
ライオンテラスから先は最難関のラストスパート。岩肌に取り付けられた急勾配の鉄階段を登り切ると、ついに頂上の広大な王宮跡に到着します。
登頂所要は麓から約40分~1時間ほど。頂上は思いのほか広く、サッカー場くらいの平地が広がっています。
その中央付近に王宮の基礎石が残り、周囲にはかつての居室区画や水槽跡が点在します。断崖絶壁の上にこれだけの建造物を築いたことに驚嘆しますが、さらに感動的なのはそこからの絶景です。遮るものの無い高さ約200mの空中から見渡すスリランカの大地は、まさに王者の眺め。
遙か彼方まで続く緑のジャングルや点在する湖沼、遠くの山並みまで見晴らせます。写真では伝わらないスケール感がありますので、ぜひ自分の目で確かめてみてください。頂上では達成感と爽快な風を感じながら、ゆっくり景色を楽しみましょう。
見所⑧:王の玉座と舞踏の広間跡
頂上エリアで見逃せないのが、岩を削って造られた石の玉座です。小高く盛り上がった場所にあり、王が腰掛けて遠方を見渡したとされるスポットです。
残念ながら今は座ることはできませんが、1500年前にこの地を治めた王の視界を追体験できます。
また玉座の周囲は「ダンスホール」あるいは夜の宴が催された広場と言われ、500人の美女たちがこの場で王を楽しませたという伝説もあります。想像が膨らむ歴史ロマンあふれる場所です。
見所⑨:王のプール(水槽)
頂上の片隅には大きな四角い窪みがあります。これは王専用のプール(水浴用タンク)の跡です。
雨水を貯められるよう防水加工されており、当時ここで王族が水遊びを楽しんだと考えられます。
高さ180mの岩山の上にありながら、きちんと水を貯えられる構造になっているのは驚きです。
なお、麓の庭園には噴水付きの池が複数ありますが、これらは重力を利用した巧妙な水路システムによって貯水池から水が供給され、雨季には今でも噴水が自動で稼働するほど当時の水利工事は優れていたそうです。古代スリランカの高度な技術力に感心させられます。
見所⑩:コブラの門
下山ルートの途中、出口付近に最後の門があります。
門の上部にある大岩の形状が蛇の頭(コブラ)がフードを広げたように見えることから「コブラの門」と呼ばれます。古代、シーギリヤロックには前述の象の門とこのコブラの門から入場し、内部を通ってライオンテラスに至る動線だったと考えられています。
現在観光客は一つの入口から入りますが、この出口側に残るコブラ型の岩も是非見上げてみてください。
以上が主な見所になります。順路にはほかにも大小様々な遺構が点在していますが、ここで紹介したポイントを押さえておけば十分満喫できるでしょう。
なお、麓にはシーギリヤ博物館も併設されています(入場料はシーギリヤロックのチケットに含まれています)。
日本の援助で2009年に建てられた博物館で、シーギリヤロックの歴史や発掘品、シーギリヤ・レディの複製画などが展示されています。
時間があればこちらも立ち寄ってみると理解が深まりますよ。
シーギリヤロックは怖い?高所恐怖症でも大丈夫?
さて、「シーギリヤロックが怖い」という噂を耳にすることがあります。
実際、高さ約200mの断崖に沿って細い階段を登るため、高所恐怖症の人にはかなりスリリングかもしれません。
特に終盤のライオンテラスから頂上へ伸びる鉄の階段は傾斜が急で足元の隙間から下が丸見えです。風が吹くと少し揺れる感じもあり、高い所が苦手な方は足がすくむ思いをするでしょう。
それでも大丈夫!対策と心構え
まず恐怖心への最大の対策は「上だけを見て登る」ことです。手すりが設置されていますので、しっかり掴んで前だけを見ながら一歩ずつ登れば、下を見なければ恐怖はかなり和らぎます。周りの景色を楽しむのは降りてからのお楽しみに取っておきましょう。また焦らず自分のペースで休み休み登ることも大切です。幸いライオンテラスという広めの休憩所がありますので、頂上まで行くのが厳しければ無理せずそこで待機する選択肢もあります。「怖い」と感じたら決して無理をしないこと。シーギリヤロックは頂上まで行かずとも、途中まででも十分雰囲気を味わえます。
安全面について
シーギリヤロックの階段や通路は観光客向けに整備されており、基本的には安全です。手すりや滑り止めも付いています。ただし足元は場所によって濡れていたり凹凸があるため、歩きやすい靴で登るのが望ましいです(サンダルでも可ですが、スニーカーが安心)。また頂上の崖際には囲いが無い場所もあるので、写真撮影に夢中で縁に近づきすぎないよう注意しましょう。
動物・虫に注意
高所よりも実際怖いのは野生のスズメバチかもしれません。シーギリヤロック周辺にはハチが生息しており、特に暑期にはライオンテラス付近に巨大な巣ができて大量発生することがあります。まれに観光客が刺激してしまいハチが大群で襲ってくる事故も報告されています。そのため現地では「静かに行動する」「ハチの巣に近づかない」など注意喚起のサインが出ています。万一ハチが飛来してきたら慌てず低姿勢でその場を離れるようにしましょう。管理局が防護ネットを用意している場合もあります。実際には滅多に遭遇しませんが、夏場は最悪ハチのために登頂禁止となる日もあるとのこと。こうした自然要因も頭に入れておくと良いでしょう。
結論として、高所恐怖症でも工夫すれば十分登れますし、恐れる価値の無いほど素晴らしい体験が待っています。
無理は禁物ですが、ぜひ可能な範囲でチャレンジしてみてください。登り切った先の達成感は格別ですよ!
シーギリヤロックの歴史と謎に迫る
この壮大な岩山にまつわる歴史物語も、シーギリヤロック観光の醍醐味です。シーギリヤには血塗られた王位争いと短い繁栄、そして多くの謎が秘められています。
時は5世紀末、シンハラ王朝(アヌラーダプラ朝)の王子だったカッサパ1世(カーシャパ王子とも)が、ある野望を抱きます。
王位継承に不利な立場だった彼は、ついに実の父である王ダートゥセーナを殺害し、異母弟モッガラーナ(正当な継承者)をインドへ追放して、自ら王位を奪い取りました。父王殺しという大罪を犯したカッサパ王は仏教徒として罪の意識に苛まれつつも、自らの新たな都を築くことを決意します。
彼が選んだ場所こそ、幼少期に訪れて心惹かれていたというシーギリヤの岩山でした。
即位後、カッサパ王はわずか7年という驚異的な工期で岩山の上に華麗なる宮殿を完成させ、シーギリヤへ遷都します。周囲には緻密に設計された都市と庭園を築き、まさに難攻不落の要塞都市を作り上げました。シーギリヤは宮殿であると同時に城塞でもあり、王はそこで約18年間統治を行います。
しかし、王の栄華は長く続きませんでした。国外に逃れた弟モッガラーナが復讐の軍勢を率いて戻ってきたのです。紀元495年、シーギリヤの麓で両者の決戦が繰り広げられました。当初優勢だったカッサパ王でしたが、自軍が誤解から混乱し見放されてしまいます。
孤立無援となった王は自ら剣を喉に突き立て自害し果てたと伝えられます。カッサパ王の死によりシーギリヤは陥落し、追放されていた弟モッガラーナが新王となりました。
モッガラーナ王は王都を元のアヌラーダプラへ戻し、シーギリヤの地は仏教僧の修行の場として寄進されます。
以後、シーギリヤは再び静寂な僧院都市となり、13世紀頃まで僧侶たちに利用されましたが、その後放棄され密林の中に埋もれていきました。
シーギリヤが歴史の表舞台に姿を現すのは、それから実に約1400年後、19世紀末のイギリス人探検家による再発見の時です。
熱帯雨林に覆われた岩山で色鮮やかな美女壁画が偶然目に留まり、それがきっかけで本格的な発掘調査が行われました。当時の壁画の美しさに誰もが驚嘆し、「こんな秘境にこんな文明があったとは!」とセンセーションを巻き起こしたといいます。
現在、シーギリヤロックは世界遺産かつスリランカ観光の目玉として、多くの人々を惹きつけています。
しかし、多くの謎が残されたままでもあります。先述の美女壁画の正体しかり、「なぜカッサパ王は岩山の上に都を築いたのか?」、「庭園の高度な設計はどのように伝承されたのか?」、「巨大な岩をどのように切り出し運んだのか?」等々、歴史学・考古学の観点でも興味は尽きません。
一説では、カッサパ王の築いたシーギリヤは単なる要塞ではなく、当時台頭していた新興仏教(大乗仏教)と古来の仏教(上座部仏教)の宗教的対立の舞台でもあったという分析もあります。真相は研究者によって諸説ありますが、こうした「解明されていない謎」こそがシーギリヤロックのロマンを一層かき立てていると言えるでしょう。
最後にもう一つ。シーギリヤロックはその独特の価値から、「世界第8番目の不思議」とも称されています。
世界七不思議に次ぐ驚異的建造物という意味で、かのタージマハルや万里の長城と肩を並べる評価を受けることもあるのです。カッサパ王の狂気と情熱、そして古代スリランカ人の知恵が生んだこの空中都市は、まさに奇跡の遺産と言えるでしょう。
まとめ:シーギリヤロック観光のポイント
今回のポイントをまとめると以下となります。
- 行き方:個人旅行なら断然タクシーチャーターがおすすめ。時間短縮・安全快適で、1日1万円程度と意外に手頃。公共バス・鉄道は安いものの所要が長く上級者向けです。
- ベストタイミング:見学は早朝または夕方が◎。朝5:30開門なので日の出登頂も可能。真昼は酷暑と混雑になるため避けましょう。
- 見所:象の門やライオンの門など登攀ルート上に見所多数。特に中腹の美女壁画「シーギリヤ・レディ」は必見ですが撮影不可なので要目視。頂上からの絶景も圧巻です。
- 所要時間・服装:往復で約2時間見ておけば十分。1,200段の階段を登るため、動きやすい服装・滑りにくい靴で挑みましょう。岩場なのでサンダルよりスニーカー推奨。
- 高所対策:「怖い」と感じる箇所もありますが、手すりを持ち焦らず一歩ずつ進めばOK。無理なら途中で待つ勇気も大事です。蜂対策に夏場は静かに行動するなど注意を。
シーギリヤロックは多少体力は使いますが、特別な登山技術が必要なわけではなく、しっかり準備すれば誰でも楽しめる場所です。
高所が苦手な方も、多くの旅行者が登頂している実績がありますので過度に恐れる必要はありません。
何より、頂上で得られる達成感と眼下の絶景は、苦労を吹き飛ばす素晴らしさです。
スリランカ旅行のハイライトとして、ぜひシーギリヤロックの魅力を存分に味わってきてくださいね。
きっと一生の思い出になることでしょう。安全第一で、良い旅を!