南アジアの島国スリランカには、色とりどりのカレーや個性的なストリートフードなど、美味しい食べ物がたくさんあります。
本記事では、日本人観光客向けにスリランカ料理の特徴や定番の人気メニューをご紹介します。
ココナッツの風味が効いたヘルシーなカレーから、屋台で大人気の「コットゥ・ロティ」まで、スリランカの絶品グルメの魅力を余すところなく解説します。
旅行前にぜひチェックして、現地での食事をもっと楽しんでくださいね。
スリランカ料理の特徴
スリランカ料理は一見インド料理に似ていますが、実は独自の特徴がたくさんあります。
最大のポイントはココナッツの多用です。
スリランカは国土の約20%がココヤシ栽培というほどココナッツが身近で、料理にもココナッツミルクやココナッツオイルをふんだんに使います。
そのためカレーにもまろやかなコクが加わり、インドのカレーよりマイルドな味付けになる傾向があります。
一方で唐辛子やスパイスもしっかり効かせており、辛いもの好きにはたまらない風味です。
また、複数のカレーを一度に味わえるのもスリランカ料理ならではの楽しみ方です。
日本のカレーライスのように1種類のルーをかけるのではなく、一つの皿に数種類のカレーや副菜を少しずつ盛り付け、ご飯と混ぜながら食べるのが一般的です。
例えば定番の「ライス&カリー」では、ご飯の周りに豆や肉、魚、野菜など様々なカレーが並び、混ぜ合わせていただきます。
一度に色々な味や食感を楽しめるので、飽きずに食べられるのが魅力です。
さらに、魚介類を使った料理も豊富です。
インド洋に浮かぶ島国スリランカでは新鮮な魚やエビ、カニが手に入るため、魚のカレーやシーフードカレーも人気です。
モルディブフィッシュと呼ばれる鰹節のような乾物を出汁に使うなど、日本人の口に合う工夫も見られます。
そのほかシナモン、クローブ、ターメリック、カレーリーフなど香り高いスパイスを組み合わせて使うのも特徴です。
一度食べればやみつきになる奥深い味わいを生み出しています。
なお、食文化として手で食べる習慣があることも覚えておきましょう。現地の人は右手の指先でご飯とおかずを混ぜ合わせ、器用に口に運んで食事をします。
観光客がスプーンやフォークで食べても問題ありませんが、機会があればぜひ現地流の手食にも挑戦してみてくださいね。
インド料理との違いは?(豆知識)
スリランカ料理はインド料理に近いイメージを持たれますが、上記のようにココナッツミルクの使用量が多くマイルドなこと、汁気が多めでさっぱりしたカレーが多いことなどが主な違いです。
また主食についても、北インドでは小麦のナンやロティが主流ですが、スリランカでは米飯が中心で、さらに米粉を使った麺(後述のストリングホッパー)や小麦粉の薄焼きパン(ロティ)もよく食べられます。
島国という地理からシーフードの使用が多い点も異なります。一方、南インドから伝わった料理も多く、発酵生地で作るドーサ(後述)や蒸しパンのイドリなども一部地域で楽しまれています。インドと似ているようで違いもあるスリランカの食文化、ぜひ実際に味わって違いを体験してみてください。
スリランカの定番料理&ストリートフード
ここからは、スリランカを訪れたらぜひ食べたい定番料理や人気グルメをジャンル別に紹介します。
スリランカの国民食ともいえるカレー料理から、朝食でよく食べられる軽食、屋台で大人気のストリートフード、さらにはデザートまで幅広くピックアップしました。
ライス&カリー(Rice & Curry)-スリランカの国民食
「ライス&カリー」とは、ご飯(ライス)に複数のカレー(カリー)を盛り合わせたスリランカの定番料理です。
日本のカレーライスに当たるポジションですが、特徴は何といっても一皿で色々なカレーを味わえること。
ご飯の上や周りに豆カレー、チキンカレー、フィッシュカレー、野菜のカレーなど数種類のカレーと副菜が盛り付けられ、これらを少しずつ混ぜながらいただきます。辛いカレーも野菜の副菜と混ぜればマイルドになるなど、自分好みのバランスで食べられるのが楽しいポイントです。
ライス&カリーは基本的にスパイシーでヘルシー。
野菜や豆類が豊富に使われるうえ、アーユルヴェーダの思想に基づいて辛さを控えめにアレンジしたカレーもあり、体に優しいメニューでもあります。
例えばゴツゴラと呼ばれるハーブを使ったサラダ「マッルン」や、ココナッツふりかけの「ポルサンボル」など、滋養たっぷりの副菜が添えられることもあります。
一度に様々なおかずを食べられるライス&カリーは、初めてスリランカ料理を体験する日本人にもぜひ試してほしい一品です。
現地の食堂ではライス&カリーがブッフェ形式で提供されることもあります。
好きなカレーを少しずつ盛って、自分だけの「ライス&カリー定食」を作ってみましょう。
ホッパー&ストリングホッパー(Hopper / Appa & Indiappa)-定番の朝食パンケーキ
ホッパー(アッパ)とストリングホッパー(インディアッパ)は、スリランカの代表的な朝食メニューです。
ホッパーは見た目がユニークなお椀型のクレープのような料理で、米粉とココナッツミルクを発酵させた生地を丸い小鍋で焼いて作ります。
中心部はふんわり蒸しパン状、縁はレース状に薄くパリパリという不思議な食感で、そのままでもほんのり甘く香ばしい風味です。
中でも人気なのがエッグホッパーで、生地を焼く途中で卵を落として半熟状に仕上げたものです。
朝食の定番で、お好みでカレーやサンボル(薬味)を乗せていただきます。器のような形が可愛らしく、写真映えする料理として女性旅行者にも評判です。
一方、ストリングホッパー(インディアッパ)は米粉を練った生地を麺状に押し出し、小さな丸形に蒸したものです。
見た目はまるでそうめんを丸く固めたようで、淡白な主食ですがカレーやココナッツサンボルと合わせると抜群に合います。
朝食や軽食によく登場し、消化に良いためホテルのビュッフェでも提供されることがあります。
ストリングホッパーに合うサラサラのカレーをかけたり、少量のスープに浸して麺料理のように食べたりと、ユニークな食べ方も楽しめます。
ロティ(ゴダンバロティ&ポルロティ)-手軽に食べられる薄焼きパン
ロティとは、薄く焼いたパン全般を指す言葉で、スリランカでは主に小麦粉生地を鉄板で焼いた無発酵パンのことをいいます。インドのチャパティにも似ていますが、スリランカのロティには独自のアレンジがあります。代表的なのはゴダンバ・ロティとポル・ロティの2種類です。
ゴダンバ・ロティは、生地をクレープのように薄く伸ばして焼いたロティです。
そのまま主食のパンとして食べるほか、中に具を包んでホットサンド状にしたり、後述のコットゥの材料にしたりと応用自在なのが特徴です。
屋台や食堂では、スパイスで炒めたジャガイモや人参、ひき肉などの具をゴダンバ・ロティで包んだロティロール(ロールス)が売られています。
片手で気軽に食べられるので、小腹満たしのおやつや軽食にぴったりです。
また、お店によっては出来立てのゴダンバ・ロティをカレーの付け合わせとしてナンのように提供することもあります。
薄くてもっちりした食感で、カレーをすくって食べると相性抜群ですよ。
一方、ポル・ロティは生地にすりおろした新鮮なココナッツを練り込んで焼いたロティです。
ゴダンバより少し厚みがあり、素朴で優しい味わいのパンになっています。
ほんのり甘いココナッツの香りがふわっと広がり、そのまま食べても飽きのこない美味しさです。
現地では朝食によく食べられ、カレーにつけて主食にしたり、紅茶と一緒におやつ代わりにしたりします。
大きさは一口サイズからお皿いっぱいのものまで様々で、生地にスパイスや果物を混ぜ込んだアレンジ版もあります。
日本の南国系パンケーキに近い感覚で楽しめるでしょう。
コットゥ・ロティ(Kottu Roti)-屋台No.1人気の鉄板炒め
コットゥ・ロティはスリランカを代表するストリートフードで、屋台飯No.1の人気メニューです。
プレーンなゴダンバ・ロティ(小麦粉のクレープ状の薄焼きパン)を細かく刻み、野菜や卵、肉などと一緒に大きな鉄板の上で豪快に炒め合わせた料理で、その見た目はまるで「パンのチャーハン」。一口サイズに刻まれたロティ生地がご飯粒の代わりになっていて、食べ応え満点です。
コットゥを屋台で調理していると、金属ヘラでカチャカチャと刻む独特のリズミカルな音が夜の市場に響き渡ります。
この調理音こそコットゥ名物ともいえ、「コットゥ」という名前もシンハラ語で「みじん切りにする音」に由来するとの説があるほどです。
ヘラさばきの小気味良いパフォーマンスは見ているだけでワクワクし、思わず動画を撮りたくなる光景ですよ。
気になるお味は、日本の焼きそばやチャーハンに近い親しみやすい味で、多くの日本人旅行者に「食べやすい!」と好評です。
スパイスでしっかり炒めていますが、辛さはお店次第で調整可能。
チキン、ビーフ、シーフードなど具材の種類も豊富で、中にはチーズを入れた濃厚な「チーズ・コットゥ」もあり、バリエーションは無限大です。
通常は注文するとお皿に山盛りによそわれ、別添えのカレーソースが付いてくることもあります(このソースをかけるとさらに美味!)。
夜市の屋台で地元の学生や仕事帰りの人たちに交じって熱々のコットゥ・ロティを頬張れば、「これぞスリランカ!」という気分が味わえること間違いなしです。
ビリヤニ(Biriyani)-スパイス薫る祝祭の炊き込みご飯
ビリヤニは、スパイスと肉や野菜と一緒に炊き込む香り高い炊き込みご飯で、その豪華さから「炊き込みご飯の王様」とも称されます。
インドや中東でもお馴染みの料理ですが、スリランカでもイスラム系住民の伝統料理として根付いております。
特に結婚式やお祭りなど特別な日に供されることが多いご馳走です。
ビリヤニには細長いインディカ米が使われ、クミン、コリアンダー、ターメリック、シナモン、クローブ、カルダモンなど数多くのスパイスと肉や魚、エビなどの具材を加えて一緒に炊き込みます。スパイスの香りがご飯全体にしみわたり、ホクホクの具とともに噛むほどに奥深い味わいが広がります。
スリランカの米は日本のように粘りがなくパラパラとしているため、ビリヤニはまるでピラフやチャーハンのような軽い食感に仕上がるのも特徴です。
レストランでは蓋つきの鍋やバナナの葉で包んで蒸らしたビリヤニが供され、蓋を開けた瞬間に湯気と共に立ち上る芳香は食欲をそそります。
鶏肉のビリヤニ、マトンビリヤニ、シーフードビリヤニなど種類も様々。旅行中に機会があれば、一度はこの特別な炊き込みご飯を味わってみてください。
普段のカレーとは一味違う贅沢な美味しさに出会えるはずです。
スリランカの軽食・おつまみ(ショートイーツ)
スリランカには食事と食事の合間につまむ軽食(ショートイーツ※)文化もあります。
街中のパン屋さんや屋台では、様々なスナックが売られていて、観光中のおやつにも困りません。
中でも人気なのがロールス(ロール)と呼ばれる揚げ春巻きです。
香辛料で味付けしたジャガイモや魚、ひき肉などのフィリングを小麦粉のクレープ生地で巻いて揚げたもので、スリランカのタミル人にとっても大好物の一つです(カレー風味のポテトコロッケを春巻きで包んだようなイメージです)。
他にも、ひよこ豆粉のスナック「ワデ(ワダ)」や、サクッとした生地の中にスパイシーな具を詰めた三角形の「パティス」や「サモサ」、そして先述のロティ生地で作るフィッシュロールやカレー風味のパンなど、豊富な軽食メニューがあります。

ワデ
スナック以外でぜひ試してほしいのが、ビールのおつまみ系料理です。
街の食堂やバーでは「デビルド(Devilled)」と総称されるピリ辛のおかずがよく注文されます。
例えば「デビルド・チキン」「デビルド・フィッシュ」など、鶏肉や魚介類を唐辛子たっぷりの甘辛いソースで炒めた一品です。
その名の通り悪魔的な辛さがクセになる美味しさです。
真っ赤な見た目ですが甘酸っぱい風味もあり、ご飯にもお酒にもよく合います。炒めたカシューナッツのデビルドも人気があります。
辛いおつまみを頬張りつつキンキンに冷えたビールを飲めば、暑い夜も最高にリフレッシュできますよ。旅行中に屋台やローカル食堂を訪れた際は、ぜひスリランカ流の軽食とお酒の組み合わせも体験してみてください。
※「ショートイーツ(Short Eats)」とは英語由来の現地表現で、「軽食」全般を指します。
スリランカのデザート&飲み物
食事の締めくくりには、南国スリランカならではの甘いデザートも楽しみましょう。代表的なのがワタラッパン(Watalappan)という伝統スイーツです。
黒糖(ヤシ糖)とココナッツミルク、ナツメグ、卵で作るプリンのような蒸しデザートで、とても濃厚な味わいです。
一見甘そうですがナツメグの香りが効いており、ココナッツのコクと相まって上品な風味に仕上がっています。
しゅわっとした口当たりの中に素朴な甘みが広がり、紅茶との相性も抜群です。
もう一つ試してほしいのが「カード(Curd)」と呼ばれるデザート。
水牛の乳から作ったヨーグルトで、クリームチーズのように濃厚でありながら後味はさっぱりしています。強めの酸味が特徴で、そのままだとかなりプレーンな味ですが、上から椰子の花蜜を煮詰めた黒蜜シロップ(キトゥルハニー)をとろりとかけて食べるのがスリランカ流です。
濃厚ヨーグルトにコク深い黒蜜が絡み合い、一度食べるとやみつきになる美味しさですよ。カルシウムや乳酸菌も摂れるので、スパイシーな食事で火照った舌を休めるデザートとしても最適です。
このほか、南国フルーツもデザート代わりにぜひ味わってみてください。
マンゴー、パイナップル、バナナ、ジャックフルーツなど新鮮なフルーツが安く手に入ります。
屋台で買ったフルーツをその場でカットしてもらい、食後にかぶりつくのも旅ならではの醍醐味です。また、スリランカは世界有数の紅茶産地として有名です。
セイロン紅茶と呼ばれる芳醇な紅茶はお土産にも人気なので、カフェやホテルで本場のミルクティーを味わってみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回のポイントをまとめると以下となります。
ポイント
- スリランカ料理はココナッツミルクや豊富なスパイスを使い、インド料理に似つつもマイルドで奥深い風味が特徴。
- ライス&カリーは一皿で複数のカレーを楽しむスリランカの国民食。色々なカレーを混ぜ合わせて食べるスタイルで、野菜や豆もたっぷり摂れる。
- ホッパー(ボウル型クレープ)やストリングホッパー(米麺を蒸したもの)は朝食の定番。エッグホッパーやサンボル添えでぜひ現地の朝ごはんを。
- ロティは薄焼きパンの総称。中でもゴダンバ・ロティ(薄いクレープ状)は具を包んだ軽食に、ポル・ロティ(ココナッツ練り込みパン)はおやつに人気。
- コットゥ・ロティは屋台No.1の鉄板料理!ロティを細かく刻んで肉野菜と炒めたもので、焼きそば感覚のクセになる味。
- ビリヤニはイスラム文化由来のごちそう炊き込みご飯。特別な日に食べられ、スパイスと具材の旨味が染みこんだ香り豊かな味わいが魅力。
- そのほかロールス、カトレット、ワデ、サモサなど軽食(ショートイーツ)も豊富。デビルド・チキンなど辛旨いおつまみ料理もあり、夜のビールが進む。
- デザートにはワタラッパン(黒糖ココナッツプリン)や、水牛ヨーグルトのカード+キトゥル蜜が絶品。南国フルーツや本場のセイロン紅茶もぜひ堪能を。